眠るまでに見た夢のこと

眠るまでに眼に映った事聞いた事、読んだ本やった事行った所思った所を書きます。時々、眠った後に思ったことも書きたい(願望)

由緒正しき名探偵 ハリィ・ケメルマン『九マイルは遠すぎる』

名探偵の喋り方は古今東西ほぼ決まっていて、気取っており論理的であり断定口調。それは名探偵には欠かせないピースであり、なぜなら彼の語る事が真実となるからでありましょう。

また探偵小説で明かされる真実は常に論理的であり、無駄がなく、そしてなによりクールでなければならないからございます。

 

九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2)

九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2)

 

 

由緒正しき名探偵の一人であるニコラス・ウェルト教授は現場を歩くのではなく論理と道理を駆使しているように見受けられました。ほつれや行当弥縫の解決を消して許さず、登場する人の言葉、写真、天気、距離、時間、全てが艶やかに連なる事を良しとする教授の回答は無駄がなく鮮やか。全てが短編、謎が鮮やかに切りそろえられていきます。

 

なぜかチェスが苦手との事ですが、これは仕方ありますまい。チェスは時に人が全く論理的でもなければ意味もない手を打つ事があり、彼のように全てを論理と道理で切り分ける人間には向いていない遊戯なのでしょう。まして、歴史ある探偵小説で行われる殺し、盗み、揺すり、誘拐、は全て全き論理の産物であり、チェスとは異なり全ての指し手が寸分の違いなくある一点に向かいまっすぐ指されるからでございます。