眠るまでに見た夢のこと

眠るまでに眼に映った事聞いた事、読んだ本やった事行った所思った所を書きます。時々、眠った後に思ったことも書きたい(願望)

『人生はシネマティック!』観た

最近はGAに向けて最後の追い込みをしていますが、息抜きで映画を観てきました。

初めに書きますが、とっても面白かったです。ぜひ観てほしい。


映画『人生はシネマティック!』11.11(土)公開

予告編にある通り、舞台は1940年で、ナチスが強かった時代(1941年12月が太平洋戦争の開戦なので、まだ日本はブイブイいわしていた頃です)。主人公は秘書として雇われたと思ったら、対独戦戦意高揚のための国策映画の脚本家になります笑。プロパガンダ映画の脚本という事で、「戦意高揚を計」り、「信憑性と楽観的な展望が持てる筋書とし」つつ、「さらにアメリカの協力を取り付け」た上で、「何より女性の視点も入れたい(そして、戦争に協力させたい)」と、無茶苦茶な依頼を受け製作を開始。「普通の女性の物語」として、ダンケルク撤退戦の中、父の船を操り兵士を逃がした姉妹をモチーフとした映画を作ります。

 

軍部やスポンサーの横やりや、売れなくなったかつての名優、アメリカのスポンサー向けにキャスティングされた英国空軍パイロットのノルウェー系アメリカ人(当然俳優じゃない)(つーかいるのかそんな人……)に悩まされながら、現実では空襲に見舞われながらその度にプロットを変更、台詞を修正し、最高の映画を作る……という物です。

無駄が一切なかった(ユーモア、遊びはあります)。観終わってから一番最初に思った感想がこれでした。

筋書、音楽、カット、全て素晴らしいのですが、特に舞台設定が非常に上手でした。過去の戦争の映画を撮る、となると緊張感が無くなりますが、主人公達が居るのも1940年(ダンケルク撤退戦も1940年)なので極めてタイムリー。ロンドンも空襲されるなど、映画と映画内映画(「ダンケルク」としましょう)が緊張を保ったまま繋がっています。

その緊張を保ったまま(ドキドキしたまま)「ダンケルクの登場人物」と「映画の登場人物」が掘り下げられていくのがとても良かったです。

様々な横やりでプロットは変更を繰り返すのですが、その度に主人公が俳優や先輩脚本家とぶつかり、主人公の人となりが説明されつつ、「ダンケルク」の登場人物の行動や背景も加筆修正され、深みを増していきます。主人公達の魅力が増すと、「ダンケルク」の人物たちの魅力も増していく。倍々ゲームで面白いというわけです。「飲んだくれた最悪のジジイ」にキャスティングされたかつての名優と主人公の葛藤と成長が、最終的に「ダンケルク」の登場人物のキャラの深みとして結実していくのは観ていてとても心地がよかった。

ダンケルク」のシーンは画的にお粗末に作っている(昔の映画なので)のですが、それが主人公達の不器用さや努力とリンクしており、感動します。舐めてはいけない。

皆映画の作り手ですので、臭い台詞(「人生の一時間半を捧げたいと思う映画を作りたいんだ!」「我々で観客を泣かせようじゃないか」)がバンバン出てきますが、映画自体がそれに負けていません。

テンポよく進むストーリーに沿って、映画を作った達成感と、良い映画を観る事が出来た満足感が味わえる稀な映画でした。

ぜひ。

 

*最後に文句を言いたいのですが、「人生はシネマティック!」という邦題が最高にダサい。これで損してる気がします。原題は「Their Finest」(彼らの最高の一作、的な?)で、ロマンティック・コメディにジャンル付けされていますが感動します。

ネタバレなのでボカしますが、「人が映画を好きなのはそれが構成されているからだ。全てに意味があり、目的がある。だが現実はそうではない」的な台詞が最後に主人公とぶつかってきます。(割と物理的な意味で)

つまり作品自体に『「人生はシネマティック!」ではないから人生は苦しいのだ』というメッセージがあるのです。だからこそ「ダンケルク」は「普通の女性の物語」として、その時代最も意味もなく苦しい人生を押し付けられていた人々を主人公に据えた所があります。

映画自体のメッセージとしては、それでも人生はシネマティックなんだ! 意味を見つけなきゃいけないんだ! それが強さなんだ! と一週回って伝えているのかもしれませんが、それだとああいう予告編になりませんよね(戦火の中で映画を待ちわびる人たちに、とか)……もういっそ「Their Finest」で良いと思うんだけどなぁ。


Their Finest - Official Trailer

 

*これは本当にどうでも良いのですが、空襲のシーンが結構多いです。英国はどうやら地下鉄に逃げろと推奨していたようですが、本邦は空襲時、地下鉄は基本的に封鎖しました(軍事輸送力確保のため)。どうでも良い所でブリテンとヤマトの差を見せつけられた気がしました。