『焼肉ドラゴン』を観た
映画を観てからなるべく早く感想を書こうと思って、マックに寄って書いてる。
万国博覧会が催された1970(昭和45)年。高度経済成長に浮かれる時代の片隅。
関西の地方都市の一角で、ちいさな焼肉店「焼肉ドラゴン」を営む亭主・龍吉と妻・英順は、静花、梨花、美花の三姉妹と一人息子・時生の6人暮らし。
失くした故郷、戦争で奪われた左腕。つらい過去は決して消えないけれど、“たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる”それが龍吉のいつもの口癖だった。
そして店の中は、静花の幼馴染・哲男など騒がしい常連客たちでいつも賑わい、ささいなことで、泣いたり笑ったり―。
そんな何が起きても強い絆で結ばれた「焼肉ドラゴン」にも、次第に時代の波が押し寄せてくるのだった―。
との事。
在日朝鮮人の家族を主人公にした物語です。「三姉妹の結婚と、虐められる末っ子」を軸に進んでいきます。
面白かった。とにかく「濃かった」のが印象です。
四人の子供はそれぞれ「関西弁とハングル」か「関西弁しか出来ない」し、焼肉ドラゴンを訪れる人は「ハングルオンリー」or「関西弁だけ」と、バラエティーに富んでいて、それだけでキレ方やセリフに印象が深い。
お互い微妙にわからない分、オーバーに大胆に踏み込んでいって、仲良くなる。
僕から見ると大げさに思える朝鮮の人の嘆き方もあれば、逆に龍吉(在日一世)が「近所迷惑だぞ」と言って母さんを止めるシーンは日本人のアレな感じ。
国有地を間借りして作ったボロボロの「焼肉ドラゴン」の外観といい、まさにごった煮の様相。
このごった煮が非常に心地よい。何を喋れて喋れないのか、誰と結婚するのかしないのか、それがすべて、生きるために彼らが手に入れた物であり、失った物でもある。
ラストの龍吉の日本語での独白は涙腺が緩んだ。朴訥で、つたないからこそ腹の底から言葉を出せる。そんな純真なキャラクターをうまく表現していました。
逆に末っ子の時生は、話す言葉を持っていなかった。日本で生まれて育ったのにハングルも日本語も話せない彼を通して、家族の中に歴史の暗い所が刻み込まれているようで、苦しかった。その苦しさも含めて、良い映画だった。
劇が再演したなら、観たいな。