眠るまでに見た夢のこと

眠るまでに眼に映った事聞いた事、読んだ本やった事行った所思った所を書きます。時々、眠った後に思ったことも書きたい(願望)

『ヒトラーの描いた薔薇』を読んだ

ブログでも何でも良いから書き続けるのは良い事な気がしている。

 

 

 無数の凶兆が世界に顕現し、地獄の扉が開いた。切り裂きジャックカリギュラら希代の殺人者たちが脱走を始めた時、ただ一人アドルフ・ヒトラーは……表題作「ヒトラーが描いた薔薇」をはじめ、地下に広がる神話的迷宮世界を描いた傑作「クロウトウン」ほか、初期作品から本邦初訳のローカス賞受賞作「睡眠時の夢の効用」まで、アメリカSF界のレジェンドが華麗な技巧を駆使して放つ全13篇を収録した日本オリジナル短篇集。 

 

との事。神様が嫌いな作家だという事はよくわかる作家でした。

表題の『ヒトラーの描いた薔薇』は鬱屈した怒りがテーマ。主人公の女中は殺人の罪を着せられ地獄に落されています。そんな中、地獄でシステムエラー?が発生し、地獄の門が開く。これ幸いと大罪人極悪人が脱走するのですが、彼女は天国へと惹かれて行き、そこで真犯人である元恋人と出会うのです。

ひたすらに赦しを乞う恋人。それを怒りとやるせなさを孕んで眺める女中。

しかし、彼女(地獄に居るはずの人)が天国に居るため天国でもエラーが発生。天国が毀れだしてしまうのです。

混乱の中、神が現れ――あろうことか、神は女中に地獄に戻るよう促すのです。拒否を繰り返しますが、神はわざわざ彼女の手を引っ張ってまで彼女を地獄へと運ぼうとします。この世ではなく「あの世」の不条理に諦めた彼女は地獄に戻っていくのです。

 

――とんだ勘違いだわね、先生。神様がヘマをするなんて。そのうえ、嘘を押し通そうとする。みんなが信じているという、ただそれだけの理由で。彼らは真実なんて知りたくもないんだわ。このほうがかんたんなんですもの。世の中の人の大部分が幻想を信じ込んでしまったら、そう、そのときにはそれはもう現実なのね。だけど、わたしたちは知っているわ、先生。だれがどこに属するか、わたしたちだけは知っているわね?――

(p265)

 

戻った先、地獄の門では未だヒトラーが美しい薔薇を描き続けていた――

神様が妙に人間臭いんですよね。というか、組織の長っぽい。そして女中は諦念と共に地獄へ戻る。

救いがないとはまさにこの事で、くそったれ感に満ちた作品です(面白いけど)

 

この他にも「バジリスク」「血を流す石像」の暴力のカタルシスに満ちた作品はすごく面白かった。救いはありませんが。

他のエリスン作品も読んで純粋な怒りを培養したいと思います。