『ヴァリス』 P.K.ディック
もう全然わけわかんないっす。今までのディック作品の中でぶっちぎり。
ストーリーとしては作家の主人公(明らかに作者ディック自身)が女友達を亡くしたショックから頭がイカれ始めるという物なんだけども、これを書いていて果たして意味があるのかっていうくらいわけがわからない。
ストーリーを追う感じの小説じゃないですこれは。もうここまで狂えるんだっていうのをほめたたえるべき物だと思う。
随所に意味もなく、そして過剰に挟み込まれる自分自身の宗教の教義や神学論、突然変わる場面。文章の流れ一つ一つは面白いけれど、それら全体が意味をなしていないっていうか。
ただ、随所にある「この世界は間違っている物で、本当は存在するべきだったもう一つの世界(人)があった」という観念みたいな物はずっしりと重いです。それがずっと通底している。
ディックはこの作品を境にあっちの世界に行ってしまわれたと考える人もいるという解説が非常にしっくりくる作品でした。