『帰ってきたヒトラー』を読んだ
あまりに休眠させておくてエターナルので、自分の精神衛生のために更新しよう。
ヒトラーが突如、現代に甦った!周囲の人々が彼をヒトラーそっくりの芸人だと思い込んだことから勘違いが勘違いを呼び、本当のコメディンにさせられていく。その危険な笑いで本国ドイツに賛否両論を巻き起こした問題作。本国で二五〇万部を売り上げ、映画は二四〇万人動員、世界四二言語に翻訳された空前のベストセラー小説の待望の文庫化。著者による原注付き。
との事。映画化も近い&文庫化という事で、気になっていたし読みました。風刺小説という事でよろしいでしょうか。
ドイツではナチスやナチズムを語る事はとてもセンシティブであり(当たり前か)、特にヒトラーについては教条主義的に反対を表明させるような教育がなされているそうです(巻末の解説より)。そんな中、ヒトラーがタイムスリップしてきたらどう動き、私たちはどう反応するのか? というのが作品のメインプロット。
ポイントは何より、この作品のヒトラーは「人間として魅力的である」という事。正直で、理想に燃え、躊躇う事なく意見を表明し、目標にまい進し、時に失敗から学ぶ。とても人間として魅力な存在として描かれています。
「ヒトラーを笑っているつもりが、ヒトラーと笑っている」というのが小説の一つのテーマであるそうで、確かに現代の社会問題に立ち向かう(但し、とても恐ろしい意見と共に)ヒトラーの姿勢は愉快痛快。ヒトラーのように「誠実に」物事をズッパズッパと切っていけるなら苦労しないのになぁ、とか考えてしまいます。そしてこの考えが、恐ろしい物を呼び寄せる一つの原因なのだとも。
また、最後の一文が恐ろしい。ヒトラー(及び、ヒトラーのやり方)が現代の人々の理性によってはねつけられるわけでもなく、勿論世界を征服するわけでもなく、営々と生き続ける。
拒絶反応を示し続けて忘れる事を選んでしまえばいずれまた復活してしまうし、かといってつぶさに考える事はいつの間にか飲み込まれてしまうのではないか。
恐らく、拒絶するには不断の努力が求められるのでしょう。人間の歴史は争っていた方が長く、それが普通というのであれば、なおさら。
それを象徴するような一文でした。
言葉遊びやユーモアに満ちており、面白かったです。映画も見たいと思います。