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眠るまでに見た夢のこと

眠るまでに眼に映った事聞いた事、読んだ本やった事行った所思った所を書きます。時々、眠った後に思ったことも書きたい(願望)

永遠たれ英国スパイ――『キングスマン』を観た

これは何ブログかと問われれば、ワナビ兼映画鑑賞兼読書ブログと答えようぞ。

 


「キングスマン」Web限定予告編

 

すんばらしい現代的で英国なスパイ映画だった。主人公と悪役がかっこよかった。

 

ストーリーは以下。

第一次世界大戦で世界の平和に目覚めた富豪たちが、どこの国にも属さないスパイ機関を作り、世界の平和のために戦う機関が生まれる。それが「キングスマン」。第一次世界大戦に発端を持ってくるの実に英国っぽい。

 

そのキングスマンのエージェントとして育っていく主人公が「世界のエコ」のため人類を半減させる計画を企むIT大富豪と戦う映画だ。

 

まず「英国な映画」というのは――生まれが全てを決める世界という事。

 

主人公エグジー(タロン・エガートン)はスパイ組織に居た父(作戦中に亡くなる)を持つ貧民街の住人。人生にやる気もなく、海兵隊も途中で辞めてしまい、ギャングと付き合う母親に愛想を尽かしながらも鬱屈とした日々を送っていた。そんな時、かつて父のスパイ師匠だったガラハット(コリン・ファース)と出会い、欠番が出てしまった「キングスマン」の候補生としてスカウトされる。

彼以外のスパイ候補生は全員超ハイソサエティな生まれで、紳士(ジェントルマン)だ。大卒でエリート、家もお金持ちで言う事なし。スーツの着こなしは最高にクール。日本で言えばしまむらWEGOで固めたようなファッションのエグジーは何度も生まれや親をバカにされる描写が入る。ユニクロは使っていない気がする。多分。

 

英国は生まれが全てを左右するそうで、例えば銀行などは実力があっても「スーツの着こなしが悪い」という理由で採用しないらしい。これは「生まれが良くないから採用しない」という意味だ。スーツの着こなしは謎の不文律が多く、小さい時からウェルドレッサーに囲まれていないと自然と身につかないし、お金も時間もない人間が後から学ぶのもキツイ。ジェームズ・ボンドの生まれは知らないが、スパイですら全員エリートな設定である。

 そんな中コリン・ファース演じるガラハットは「紳士として生まれるのではなく、マナーが紳士を生む」と言いながらギャングをボコボコにするスパイであり、生まれは良くないが素晴らしいスパイだったエグジーの父との経験を信じ彼をスカウトするのだ。

この点が実に英国的な異端が成り上がる映画だ。アメリカスパイなら多分皆生まれは良くないだろうし、ジェイソン・ステイサムがこの中に居たらきっとスパイになれない。彼ならキングスマンの店ごと爆破するだろう(まあステイサムはイギリス人ですけども)

厳しい試験を乗り越えたエージェントは円卓の騎士にコードネームが与えられる。ボスの名前はアーサー、エージェントはランスロット、ガラハット、モードレット。本部で情報を与えてくれるのはマーリン……ここも英国だし中二心をくすぐってくる。主人公はスパイとして成長しながら、何より英国紳士として成長するのだ。この点超クールなので絶対見る時思い出したい。

 

そんな主人公が戦う悪役はスタイリッシュな現代の悪役だった。彼が現代的なので、この映画は現代の映画になっている。

 

悪役(サミュエル・L・ジャクソン)は「世界のエコ」を企むIT大富豪で、血は見たくない、健康オタク、女性を侍らすのではなく一人だけ――という奴。悪役のイメージである「ドラッグ」「女侍らせまくり」「酒」「銃」「環境? 知るかボケ」要素はなく、ついでに言えば「白人」でもない。

かつてはこれらが「悪ではあるが権力者の必須アイテム」だった。でも、今これは全部貧者のアイテムになってしまった。貧しければ貧しい程環境の事を考える余裕はないし、ドラックを決め、酒を飲みまくり、銃をちらつかせながら女を侍らせる――

 

だから今の強者のアイテムにはふさわしくない。『キングスマン』の悪役はキッチリここを更新し、IT大富豪で健康オタクであり血を見たがらず女性は護衛の一人だけ、目的は世界のエコという悪役になっている。ついでに言えば黒人だ。スタイリッシュで狂った現代の悪役なのだ。

 

僕は日ごろ日本映画の悪役もキシリトール・ガムを噛みながらジムで筋トレをし、オーガニックなフードで夕食を決めつつ部下から「本日の殺し」の結果を聞く奴が出てきてほしいと切に願っているのだが中々実現してくれない。というかせめて日本支配くらいを目的にする悪役が出てきてほしいが居なくなってしまった。『キングスマン』はこの欲求を実に満たしてくれた。

 

成長するにつれクールな紳士になる主人公と、世界のエコを目的に大量虐殺を企むIT大富豪が戦う――『キングスマン』は現代的で、英国なスパイ映画なのだ。

 

色々書いたけど、アクションも音楽も一流でスーツのままクールに戦ってくれる。スパイ小道具も中二心をくすぐってくるしクール。もはや言う事がない。英国スパイと言えば007だけど、『キングスマン』もすんばらしい英国スパイ映画として記憶に残したい。